IDEA LAB / CONCEPT
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発想研究所 / エネルギーと物質循環のシステム構想
燃料を使う機械の構造を変えるのではなく、燃料に含まれる炭素の出所と循環方法を変えれば、別の可能性があるのではないか。この問いから、燃料の生産、回収、変換、利用を一つの系として考えました。
自動車や航空機の動力を一律に別方式へ置き換える前に、液体燃料が適する用途では、その性質を使い続けられる循環を作れないか、と考えました。機械の入口だけを変える発想から、燃料を作り、使い、炭素を回収する仕組み全体へ検討対象を広げた構想です。
これは、あらゆる用途で炭化水素燃料が有利だという主張ではありません。電力を直接使う方が合理的な用途と、貯蔵・重量・補給の条件が液体燃料に適する用途を分けます。方式を先に決めるのではなく、必要な機能に合わせてエネルギー媒体を選ぶのが出発点です。
炭素原子を回収して燃料へ戻しても、燃焼で取り出したエネルギーまで戻ってくるわけではありません。CO₂からエネルギーを持つ燃料を作るには、光や電力など外部からの入力が必要です。炭素は循環させ、エネルギーは外から供給する、という二つの収支を分けます。
生物による光合成、燃料原料の回収、必要に応じた化学変換、輸送、利用を並べ、それぞれで何が入り、何が出るかを記録します。燃料を循環させるという表現を、永久機関や無投入の再生と取り違えないことが、原理上の出発条件です。
液体炭化水素の組成を説明用にCH₂相当と近似すると、14の質量のうち炭素は12です。完全燃焼では、その炭素が44の質量のCO₂へ移るため、燃料1 kgあたり約3.14 kgのCO₂に相当します。実際の燃料組成によって変わる近似値ですが、必要な炭素量を見る尺度になります。
燃料を使う速度に見合う回収・固定が必要であり、土地や生物体に炭素を一時的にためることと、燃料へ戻す流れは別に追跡します。製造用エネルギーや輸送から排出される分もあるため、燃焼分と同量を固定しただけで、全体の収支がゼロとは限りません。
植物や光合成する微生物は、光、水、CO₂を使って有機物を作ります。しかし生物の目的は燃料の大量生産ではなく、自らの維持と増殖です。そこで、炭素固定、原料の生産、分離・回収、燃料への仕上げを分け、どこまでを生物へ、どこからを機械・化学工程へ任せるかを考えます。
細胞外へ原料を出せれば収穫・分離を変えられるのではないか、という案も検討対象です。ただし、その生物や工程を確立したという意味ではありません。生育の維持、原料の濃度、回収のエネルギー、汚染、長期安定性を含む生産系として評価する必要があります。
年間に必要な燃料エネルギーをE、単位面積当たりの年間日射量をI、生物が原料へ変える有効効率をη₁、回収・燃料化までの収率をη₂とすると、単純モデルで必要面積はA≈E/(Iη₁η₂)です。補助エネルギーや生態系への配慮をまだ入れない、入口の計算です。
この式では、同じ条件でη₁を2倍にできれば必要面積は半分です。しかし原料の回収が難しくなってη₂が下がれば、利益は小さくなります。生物単体の生産性だけを追うのではなく、光を受ける設備、培養や栽培、水・養分、回収、変換を含めた燃料の正味収量へそろえて比較します。
米国DOEの資料でも、持続可能な航空燃料の原料と変換経路は一種類ではなく、物理・生物・化学的な処理を組み合わせます。これは「燃料の生産経路を変える」という問題が、既存の技術領域として検討されていることを示します。
本構想の検討点は、特定の製造法を発明したと掲げることではなく、生物と機械の担当範囲、循環の範囲、利用先を一緒に選ぶことです。既存のバイオ燃料、電力を使う合成経路、電力の直接利用と比べ、同じ輸送や仕事を得るまでの資源とエネルギーをそろえる必要があります。
根拠資料:U.S. DOE — Sustainable Aviation Fuels(原料と物理・生物・化学的な変換経路)
燃料の炭素が循環していても、森林を減らしたり、食料や水と大きく競合したりすれば、全体として合理的とは言えません。土地の変更、栽培・培養、原料回収、精製、輸送、利用を通した排出と資源使用を確認します。
年間総量が足りることと、必要な場所と時期へ届けられることも別です。供給の変動、貯蔵、輸送、既存設備との適合を含めて評価します。航空用途では炭素の収支以外の環境影響も残るため、燃料の循環を環境問題すべての解決と扱いません。
根拠資料:U.S. DOE — Sustainable Aviation Fuel: Reducing Emissions from Commercial Flight(ライフサイクル排出と土地利用)、IPCC AR6 WGIII Chapter 10 — Transport(航空のCO₂以外の影響)
まず利用先と必要量を定め、どの炭素源・エネルギー源から、どの原料を、どの工程で得るかを一つずつ記述します。次に、文献値と実測値、想定値を分けて収支表へ入れ、回収や濃縮が全体を支配しないかを調べます。
そのうえで小さな生産・回収実験を行い、年間収量、補助電力、必要面積と水、運転を止める要因、原料の品質を測ります。良い一日の収量を年間へ単純に延ばさず、季節と保守を含む供給量へ直すことが必要です。環境負荷と費用は、その供給量を使って比較します。
炭素を循環させる物質収支と、外部から供給するエネルギー収支を分ければ、何が制約なのかを具体的に記述できます。物理法則の制約と、現在使っている生物・設備の制約を混同しない点に、工夫の余地があります。
現時点では特定の生物、生産工程、持続可能な供給量を確立していません。使う機械だけを変えるのではなく、燃料を生み出す役割分担まで設計対象へ広げた、エネルギーと物質循環の構想です。
炭素を循環させることは、エネルギーを循環させることではありません。
炭素を燃料へ戻すには、外部からエネルギーを与える必要があります。
この構想の面白さは、燃料の種類だけではなく、炭素固定・回収・変換の役割を組み替えたとき、どんな選択肢が生まれるかという点にあります。
参考資料は共通原理や先行する取り組みを示します。本構想を組み合わせたシステム全体の性能を実証するものではありません。